母子家庭等ひとり親家庭が受け取ることができる手当てのひとつ、児童扶養手当(じどうふようてあて)は、いつ、いくらもらえるのでしょうか。また、子供が何歳になるまでもらえるの?という疑問を持っている方も多いんじゃないでしょうか。
離婚した後の生活で大きな意味を持つ児童扶養手当について、実際に手続きをして児童扶養手当をもらっている立場から、離婚する前に知っておいた方がいいと思えることをまとめます。
もくじ
児童扶養手当とは
親が離婚や死別するなどして、父または母等、一人親に養育される子供のために、児童扶養手当法にもとづき地方自治体から支給される手当です。
児童扶養手当をもらえるのは?
- ひとり親家庭(母子家庭、父子家庭)
- 母または父が重度の障害をもつ家庭
- 父、母に代わって児童を養育している人
に支払われます。
父または母が生死不明の場合、引き続き1年以上遺棄している場合、裁判所からDV保護命令を受けた場合、刑務所に入っている場合等も受け取ることができます。
児童扶養手当を受け取れないケース
以下の場合は、児童扶養手当は受け取れません。
- 手当てを受けようとする人または同居の親族等の所得が、決められた額以上の場合
- 子供が里親や児童福祉施設等に預けられている場合
- 親が死別による労災や年金を受け取っていて、その額が決められた額以上の場合
児童扶養手当を受け取っている世帯数はどれぐらい?
厚生労働省が公開している統計によると、平成28年度に児童扶養手当を受給していた母子世帯総数は916,589世帯、父子世帯総数は57,030世帯、その他の世帯が32,713世帯。合計で1,006,332世帯が、児童扶養手当を支給されました。

児童扶養手当は、ひとり親家庭が受けられる公的扶助のうちでも、条件によっては額が大きい、とてもありがたい制度のひとつです。
いろいろな事情があって離婚する夫婦は多く、ひとり親家庭で育つ子供はたくさんいます。
その子供たちが健全に育ち、いずれは将来の日本を支えてくれる存在になってくれるようにと、社会が支えてくれているということですね。
児童手当と児童扶養手当
名前がよく似ている制度である児童手当との違いについて知っておきましょう。
児童手当
- 子供を監護し、生計を同じくする父または母に支払われる
- 子供が中学校を卒業する年の3月まで支払われる
- 支払いは年3回。2月、6月、10月に、前月までの分が支払われる。
- 子供の数に応じた所得制限あり(親の所得が高いと本来は受給できないが、2018年現在、特例で子供1人あたり5000円が支給されている)
児童手当の1カ月あたりの金額
0~3歳未満 | 15,000円 | |
---|---|---|
3歳~小学校修了 | 第1子、第2子 | 10,000円 |
第3子~ | 15,000円 | |
中学生 | 10,000円 | |
所得制限にかかる場合 | 5,000円 |
児童手当は、ひとり親家庭以外にも支払われます。所得制限はありますが、2018年現在、所得制限にかかる親にも特例で給付されているので、日本に住んでいる子供の親は実質みんなもらえます。
それに対し、ひとり親家庭等の親に支払われるのが児童扶養手当です。
児童手当と児童扶養手当は、どちらか一方しかもらえないというものではなく、それぞれの要件を満たせば両方もらうことができます。
就学援助との関係
学校に通う子供の親を対象に「就学援助」といって、学校関係の費用(教材費、給食費)などにかかるお金を補助してもらえる制度があります。
給食費、新入学用品費、通学用品費、学用品費、修学旅行費、医療費、体育用品費などの、年間数万円の補助を受けられる場合があるんです。
就学援助を受けるためには、所得などの条件があります。児童扶養手当を受けている場合は、就学援助を受けるための条件も満たすことになる自治体が多いようです。
児童扶養手当はいくらもらえるの?
児童扶養手当は、子供の人数と親の所得によってもらえる金額が決まります。
2018年8月~児童扶養手当の金額
所得制限にかからず全部支給となる場合、2019年4月分から、子供1人なら月額42,910円です。2人目は10,140円加算、3人目からは一人あたり6,080円加算されます。
1カ月あたりの児童扶養手当・全額支給の場合
(2019年4月時点の情報です。金額は毎年見直され変更されますので、お住いの自治体の福祉関係窓口でご確認ください)
2020年4月分から
子供1人 | 43,160円 |
---|---|
子供2人 | 53,350円 |
子供3人 | 59,460円 |
子供4人 | 65,570円 |
子供5人 | 71,680円 |
一部支給額は、子供1人なら43,150円~10,180円、2人目は加算額が10,180円~5,100円、3人目からは一人あたり加算額が6,100円~3,060円です。
全額支給となるか、一部支給となるか、または児童扶養手当をもらえないかは、親や同居の親族の所得によって決まります。
1月から6月に申請をする場合は前々年度の所得、7月から12月に申請をする場合は前年度の所得をもとに決められます。
前年度の「年度」って?
所得の計算をする場合の年度は、1月1日~12月31日のことです。
子供の学校の年度は、ご存知のとおり、一般的に4月1日~3月31日です。混同しやすいので注意ですね。
例1)2018年6月30日に児童扶養手当の手続きをする場合
1月~6月までに手続きをする場合は前々年度の所得をもとに手当ての額が算定される。
2016年度、つまり2016年1月1日~12月31日の所得をもとに児童扶養手当が算定されるということ。
例2)2018年10月1日に児童扶養手当の手続きをする場合
7月~12月までに手続きをする場合は前年度の所得をもとに手当ての額が算定される。
2017年度、つまり2017年1月1日~12月31日の所得をもとに児童扶養手当が算定されるということ。
全額支給、一部支給の上限となる所得
2018年現在、父または母が子供を育てている一人親家庭で、児童扶養手当が全額支給となる所得、一部支給となる所得の上限は以下のようになっています。一部支給となる所得を上回る所得があった場合は、児童扶養手当を受給できません。
扶養親族等の数 | 全部支給 | 一部支給 |
---|---|---|
0人 | 49万円 | 192万円 |
1人 | 87万円 | 230万円 |
2人 | 125万円 | 268万円 |
3人 | 163万円 | 306万円 |
4人 | 201万円 | 344万円 |
5人 | 239万円 | 382万円 |
養育費は所得に含めるの?
養育費は、受け取った額の80%が、児童扶養手当算定のベースとなる所得に含めて計算されます。
児童扶養手当はいつもらえるの?
離婚してすぐにもらえるのかどうか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
じつは児童扶養手当は、離婚してすぐに手続きをしても、もらえる月は数か月後となってしまう場合があるんです。
児童扶養手当の支払いスケジュール
児童扶養手当を受給するための手続き(認定請求手続き)をすると、翌月分から児童扶養手当が支払われます。
例えば、2月1日にに児童扶養手当受給のための手続きをした場合、3月、4月分が、5月11日頃に口座に振り込まれます。手続きをしてからもらえるまでの期間が、最大で3カ月以上になってしまうということです。
児童扶養手当を頼みの綱として離婚する人もいると思います。いつからもらえるのか、ぜひ確認してください。
児童扶養手当は手続きの時期に注意
また、先ほども書いたように、児童扶養手当を受給するための手続きをすると、受給できる場合は、翌月分から児童扶養手当が支払われることになります。月末近くに離婚する場合、ぜひ、その月のうちに児童扶養手当受給のための手続きをしてくださいね。
例えば1月30日に離婚して、児童扶養手当の手続きを1月31日にすることができれば、2月分の児童扶養手当からもらえますが、児童扶養手当の手続きを2月1日にしてしまうと、2月分はもらえず、3月分からの支給となってしまいます。
役所の方が教えてくれるとは思いますが、他の手続きと並行して行っている場合など案内漏れがないとも限りません。
1カ月分とはいえ、数万円になることもあり、もらえるともらえないとでは違いが大きいので、児童扶養手当の手続きは優先してきっちりとやってくださいね。
児童扶養手当は何年間(子供が何歳まで)もらえるの?
児童扶養手当は「子供が18歳になって最初の3月まで」支払われます。心身に中程度以上の障害があるお子さんの場合は、20歳未満までとなります。
手当ての一部支給停止措置について
- 児童扶養手当を受給し始めてから5年たった時
- 受給していないとしても、手当を受けられる状況になってから7年たった時
上記の1または2の、いずれか早いほうから、児童扶養手当の支給額が2分の1に減らされます。

ただし、次の要件のどれかに当てはまる場合は、届け出をすれば、一部支給停止措置の対象外としてもらうことができます。
- 就業している
- 求職活動等自立に向けた活動をしている
- 身体または精神上の障害がある
- ケガや病気で就業することが困難である
- 子供や親族が要介護状態で、受給資格者が介護する必要があり就業が困難である
就業をしていて、所得制限にかからない範囲の所得がある人は、児童扶養手当を子供が18歳の3月までは、半額にならずにもらい続けることができるということですね。
当初5年間 | 5年経過後 | ||
就業している | 所得制限以上の所得 | 受給不可 | 受給不可 |
所得制限以下の所得 | 受給可 | 受給可 | |
就業していない | 受給可 | 受給可(半額) | |
求職中または就業できない事情がある | 受給可 | 受給可 |
児童扶養の手続きの方法は?必要なものは?
さて、児童扶養手当について知っておきたいことをまとめました。
次に、児童扶養手当を受給するための手続きについても書いておきます。認定請求手続きといいます。
どこに行けばいいの?
児童扶養手当の認定請求手続きは、住所地の市区町村役場で行います。
役所では、「福祉」関係を扱う窓口に行きます。福祉課こども福祉係などという係名になっています。ちなみに離婚は「戸籍」関係を扱う窓口で手続きをします。
市区町村役場によって手続きの方法が違うようです。
私は2か所で手続きをしたことがありますが、窓口のカウンターで「ここに現住所を記入してください」「ここに印鑑を押してください」と簡単に説明を受けながら記入、押印などするだけのところもあれば、別室で子供のこと、生活のことなどいろいろ聞かれながら、丁寧に説明を受けながら記入、押印をして手続きをする役所もありました。
持って行くもの
役所によって多少違いがあるかもしれませんが、私が手続きをした役所では以下のものを持ってくるよう言われました。
- 戸籍謄本:親と子供の戸籍がいっしょの場合は1通。別々の場合はそれぞれ1通ずつ。(本籍地以外の市区町村役場で手続きをする場合。本籍地と同じ場合はその場で戸籍謄本を取れるので持って行く必要はない)
- マイナンバーカードまたはマイナンバー通知カード
- 年金手帳
- 普通預金通帳:カードや、番号を控えたメモを持って行くだけではダメと言われる可能性があります。通帳を持って行きましょう
- 印鑑:認印でOK
戸籍謄本は、本籍地以外の市区町村役場で手続きをする場合のみ必要とのことでした。
納税証明書が必要なのかな?と思って持って行ったのですが、私が手続きをした役所では、必要ないと言われました。二度手間を避けたい場合は、あらかじめ電話で必要な書類を聞いてから役所に出向いた方がいいです。
児童扶養手当認定請求手続きでは何を聞かれるの?
- 子供とは同居か別居か
- 現在の職業、収入、健康状態
- 他に同居人がいればその人の職業、収入、健康状態
- 住まいの種類(持ち家、アパート、市営住宅、母子生活支援施設などから選んで回答)
- 養育費はいつ、いくら、誰に対してもらうことになっているか
- 生活状態はどうか(余裕があるか、苦しいと感じているかどうか)
- 離婚によってひとり親家庭となった場合は、元結婚相手との交流状況について(訪問、電話、手紙、金銭的援助の有無。頻度や金額)
こういったことについて記入する欄がありました。
養育費を「誰に対してもらうことになっているか」というのは、子供が受け取るのか、私が受け取ることになっているのか、ということです。具体的には、子供の名義の口座に振り込まれるのか、私の口座に振り込まれるのかということ。
質問の意図はよくわかりませんが、そういうことを聞かれました。
役所によっては、元夫との関係や暮らしぶりなど詳しく聞かれることもあります。尋問という感じではなく、困りごとがないかたずねてくれる感じでした。
不正受給や虐待のニオイがしないかどうかも見られているのだろうなとは思いました。
児童手当証書はいつ届くの?
1カ月後くらいに、児童扶養手当証書の準備ができるようです。この証書の受け取り方も役所によって違うようで、そのまま郵送で送ってくれるところと、通知のみが郵送で届き、印鑑を持って役所の窓口に児童扶養手当証書を取りにいかなければならないところがありました。
児童扶養手当の不正受給とは
不正をしようというつもりや自覚がなくても、異性から生活費の援助を受けたりすると、不正と判断されてしまう場合がありますので、気をつけましょう。
- 元の結婚相手から養育費以外の経済的な援助を受けている。または、衣食住をともにしている
- 離婚後の交際相手から経済的な援助を受けている
- 交際相手のひんぱんで定期的な訪問があり、生活費を共にしている
- 子供を監護しなくなった
- 子供が少年院等へ収容された
- その他、児童扶養手当を受け取る資格がなくなった
こういったことを隠して児童扶養手当を受給し続けていると、3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる場合があります。
児童扶養手当の現況届とは?
児童扶養手当を受給し始めると、毎年8月に「現況届」というものを市区町村役場に提出する必要があります。
住所、同居人、職業、養育費など、現在の状況を改めて申告します。これをもとに、児童扶養手当を受給し続けることができるかどうか、またその金額も決められます。
これも、別室で面接のような形式で行われるところと、窓口のカウンターで簡単に説明、質問を受けながら記入、押印するだけのところがありました。